おはよう事務所おはよう朝
重いリュックを背負って玄関の扉をあけると、涼しい朝の風が吹いている。視線を上げ、屋根から屋根に張られた電線の向こう側の空の色を確かめてから、車のエンジンをかけた。
広めの通りでは車の列がゆっくりと進んでいる。道幅の狭い通りにはいると、車道脇を歩く通勤通学の人とすれ違う。スーツに抱っこ紐をつけて、赤ちゃんをあやしながら通り過ぎるお父さんや、幼稚園くらいの男の子を抱っこして、駅の改札へと駆け込むお母さんともすれ違った。
事務所の駐車場に着き、一階のロビーに入る。ビル清掃の職員さんが、モップで床を拭きながら、おはようございますと、声をかけてくれる。
エレベーターで上階へ上がり、事務所の玄関の鍵をあける。鍵を開ける音は、カタ。ドアを開く時は、カチャッという音がする。その音が、私の「朝の音」。
一番乗りの事務所は、まだ少し光が少なくて、東向きの窓からさす光が一番明るい。朝の廊下は静かで、影っていて、私は「夕方と朝が同居しているようだな」といつも思う。
そのうち、誰かが「おはようございます」と出社してくるから、コーヒーを淹れて、先に仕事を始めよう。